第65戦目(リングス10戦目)
田村潔司vs前田日明
1997年3月28日
東京ベイNKホール
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大会名
FIGHTING EXTENSION 1997 VOL.1
日時
1997年3月28日
当時の年齢
27歳
対戦相手
前田日明
会場
東京ベイNKホール
試合時間
裸絞め 7 分 54 秒
勝敗
●田村
関連記事:
・第5戦目 新生UWF 1989.10.25 札幌中島体育センター VS前田日明
カクトウログ2004.09.16
http://kakutolog.cocolog-nifty.com/kakuto/2004/09/970328nk.html前田日明VS田村潔司 プレイバック■970328リングス・東京ベイNKホール
中野&坂井=テーブルトーク
1986年の『INOKI闘魂ライブ』にて、前田が異種格闘技戦でドン・ナカヤ・ニールセンを破り「格闘王」と呼ばれるようになったのは、あまりにも有名。この試合で、ニールセンがあまりにもプロレスを知っているかのような動きをしたことが気になった前田は、後で調査。するとニールセンが3か月前から・・・■キック、サブミッション、スープレックス…
blue.gifはいつだって完全決着!!格闘技戦のための特訓を始めており、前田の試合もビデオで研究、グラウンド技からの逃げ方も十分に練習していたことが明らかになった。一方の前田に対して新日本は、試合の話をしたのが2か月前、資料のビデオ(それも1年半も前の試合)を提供したのが1週間前と、もたついた対応。格闘技戦の裏に前田つぶしの陰謀の匂いがしたのだ。
今日は、そんなアキラ兄さんの伝説を伝えよう。
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※バーサス創刊準備号970512記事の再録。「前田さんには新生(UWF)の頃からの借りがありますんで、まず前田日明を倒したい」田村潔司はリングスへの移籍記者会見でそう言った(1996年6月)。それから田村は、リングス勢やモーリス・スミスに勝ち続け、1996年度トーナメントで準優勝。移籍後の敗戦は、ヴォルク・ハンに2回喫したのみだ。
トーナメント中の快進撃に「田村が優勝してもしなくても、田村とはやる」と宣言していた前田は、3・28東京ベイNKホールでついに対戦。「ヒザ手術から復帰後のベストバウト」と言われるほどの動きを見せた前田は7分54秒、裸絞めでギブアップ勝ちを収めた。
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前田の強さに唯一挑んでいった
田村のカッコよさ◆坂井 まず最初に(マサ斎藤調)「こんな苦労してプロレス観に行くなんて、オレってつくづくプロレスファンなんだなぁ」って思った。前の日に徹夜で企画書を書き上げて、会社を早めに切り上げられたのはよかった。だけど会社(多摩市)を出てから会場まで2時間半だよ。舞浜駅発のNK行きバスを30分以上待っても来なくて、けっきょくディズニーランドを外から駆け足で~20分くらいかかったかなぁ~半周してたどり着いたわけ。
結果的には最後の2試合に間に合ったからよかったけど・・・。ハッキリ言って行くのがキツかった。でも、着いたらもう満員で、これには「みんなエライ!」と思った(笑)。
●中野 そうそうホントに。オレも「なんでこんな苦労して、しかも会社にいろんな不安を残したままムリしてプロレスを観に行かなきゃならんのか」なんて自問自答したよ。ディズニーランドを間違えて、逆方向に半周しながらさ。でも、着いてみたら大観衆大盛況。いつものリングスのNKの感じじゃなかったよね。
オレが観ることのできた高坂剛VSビターゼ・タリエル、山本宜久VSハンス・ナイマンもグレードの高い試合だったんだけど、なんと言っても前田VS田村。
◆坂井 いやぁ、何から話をしようか。いちばん強く印象づけられたのは、前田強し!ってことだね。まわりのお客さんも口々に「前田、強いなぁ」って言ってた。みんな、もっと田村が一方的に強さを見せ付けると思っていたはず。前田が勝つにせよ、負けるにせよね。だから、予想外の面白さがあったと思うのね。
●中野 ここんところの前田のヒドさったらなかったよ。この前の武道館なんかその典型。アルティメット(何でもあり)の特訓をつんで寝技系の格闘家のさばきを身につけたモーリス・スミスにあの不完全なタックルを何度も何度も繰り返すところなんか、もう悲しくなっちゃったもんね。
でも、そのアルティメットの経験さえあり、いまやU系レスラーの中でも最高の技術を持ち合わせているであろう田村にあの闘いぶり。
◆坂井 序盤戦で前田が出したスリーパーなんて、むちゃくちゃ決まっていたもんね。田村はエスケープしたばかりか、ロープ際でしばらくうずくまってたじゃん。あと、グラウンドの攻防だって、確かに前田にピンチはあったものの、いつもの田村流の動きをさせなかった。
長身と体重を利用しているのもウマいけど、底知れない技術が前田にはあるよね。田村だって、思わぬところで関節技を決められたりした。前田ならではの不思議な強さで、これを田村も「思っていた前田さんとぜんぜん違った」ってコメントしてる。
もうここでボクの結論を言っちゃうけど、前田流の強さ、前田自身の強さはガッチリと守られたと思う。この「守り続けていること」がスゴいと思うわけ。そしてその前田に挑んでいった田村にドラマを感じる。安生(洋二)とか外から前田をアレコレ言ったことがあっだけど、どれだけ前田のことを知っているんだって言いたい。高田(延彦)だって同じ。
前田に真正面から挑んでいったのは、新生UWFからは田村だけだったわけ。リングスに(Uインターから)移籍してきて、トップをめざす過程の一つとして前田と対戦した・・・しかも前田のヒザを集中攻撃することなく。田村は文句なくカッコいい。そう思うわけよ。
前田は田村のイメージを
ある部分、完全にツブした●中野 いわゆるプロレス的な流れから言ったら、前田は田村に負けてもいいわけよ。もうイメージ的には田村はエースになったって誰も文句は言わないよ。ヴォルク・ハンには2連敗しているけれど、だからといって、他団体・他格闘技に対する戦略的イメージダウンは感じさせないし。むしろ前田が居座り続けているほうが、そのイメージダウンが出てくるように思うな。
しかし、ここで問題なのは、その「イメージ」。僕らは田村にものすごい幻想を膨らませていた。リングスデビュー戦であのディック・フライをアッという間に倒し、U系レスラーの大きな壁だったモーリス・スミスを短時間で片付けてしまったところなんか「コイツはスゴい」と思うと同時に「リングス大丈夫か?」なんていうふうにも思ったもんね。
プロレスファンは試合やマスコミの報道をもとに、それぞれ独自のイメージをつくっていく。そこがプロレスファンのプロレスファン足りえるところ。それがなくなったら、もうプロレスファンがプロレスファンであるアイデンティティなんてなくなるし。そのうえで団体、レスラーはその幻想を打ち破るような「現実」をファンに見せつけなくっちゃならないと思う。「ファンとプロレスをする」って、本来そういう意味だと思う。
最近のプロレスの中の「ファンとプロレスをする」という意味合いは、この部分が欠けていたと思う。「プロレスをする」という意味合いを「暗黙の了解の中での駆け引きの勝負」なんてふうに別の意味で理解してしまったんじゃないだろうか、ボクらは。だとしたらヤバいぜ、それは。腐りきっている。
◆坂井 エッ?
●中野 例えばさ、新日本の札幌(1997年2月9日)でやった金本浩二VS TAKAみちのく戦。週刊プロレス(0225号)で読んだTAKAのコメント「これがメジャーなのか!? 叩き潰して気持ちいいだろうよ。オレはこんな試合をやるために、1年間やってきたんじゃない」なんか、その典型のような気がする。
プロレスってお互いの了解のうえでいい試合をファンに見せることが目的なんだろうか。そんなんなら、かなり次元の低いジャンルだぜ、プロレスって。そんなTAKAのコメントを当たり前のように受け取ってしまう傾向がボクらの中になかっただろうか。
潰しにきた金本に対して対抗する実力があれば、自分もファンも対戦相手も納得のできる・・・それこそファンを魅了する・・・試合を展開できるはずじゃないのか。でも、見せ付けられなかったのは、自分の実力のなさ。それが現実なら仕方のないことなのに。
◆坂井 レスラーは常に、ファンに対して意表を突き続けなければならない。最低でも、それがプロレスなんじゃないかと思うんだけどね。ボクらの予想を上回る動きだとか、攻防だとか、技術だとか・・・。
●中野 これは言い過ぎかもしれないけれど、前田は田村の「イメージ」をある部分、完全にツブしたね。パンクラスでさえ欲しがった田村の近代U系レスリングは、前田の古いランカシャー・レスリングとカリスマっていう、いかにもプロレス的なハッキリしないものの前に吸い込まれて、ついつき合わされ、負けてしまったんだから。田村の「イメージ」をツブされ、甘く見ていた前田の「イメージ」を取り戻したボクらファンは、ただ感嘆するしかないよ。■□
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